朝市センター保育園
園長 安達 喜美子 様
朝市センター保育園は、仙台駅から徒歩4分という立場から、仙台市の中心部に職場をもつ人々の「職場の近くの保育園」として、1987年より運営しています。ひとり一人の育ちに沿ったきめ細やかな保育を実践しています。現在は、クラウドファンディングや「みやぎチャレンジプロジェクト」を通じて資金を集め、認可保育園への移行を目指しています。
〒980-0021 仙台市青葉区中央4丁目3-28 朝市ビル5階
--今日はよろしくお願い致します。朝市センター保育園さんでは、布おむつは推奨なんですか?それとも、布おむつ指定なんですか?
子どもの体調によっては紙おむつを使う場合はありますが、基本的0歳の子は「布おむつ」です。最近は、布おむつで保育する園は減少してきていますが、私たちが保育士になりたての頃っていうのは、多くの保育園が布おむつでやっていました。
ですから、当園も開設当初から布おむつという選択肢に迷いはありませんでした。
--若い世代だと、布おむつの認知度は低いと思うんですが、保護者の反応はどんな感じなんですか?
2通りの反応です。1つは「えぇー!昭和の話じゃないんですか?!」という驚きの反応と、「布おむつ、良いですね」という同意の反応です。
--布おむつの良さとはどんなところにあるのでしょうか?
おしっこをするとビショビショになって、冷たかったり、気持ち悪いなっていう不快な感じを、彼ら自身が体験します。そうすると、伝えようという気持ちが自分の中から湧き上がってきて信号を発信する。保育士がそれに気づき、「おしっこでたかなー」と駆けつけて、「あぁ、出てたね、気持ち悪かったねぇ」と、赤ちゃんの目を見ながら、彼らが感じている不快感に共有しながら語りかけます。
そして「ふかふかのおむつに取り換えて、さっぱりしたねー」と声をかけて、今度は快の気持ちを共有します。こんな場面が1日に10回以上繰り返されます。
この感情を一緒に共有する時間、この一瞬一瞬っていうのが、実は赤ちゃんとのコミュニケーションの肝の部分なんだと思います。紙おむつは吸収力に優れているがゆえに、この感じを体験するのがなかなか難しいと思うんです。原点回帰じゃないけれども、布おむつは「古いのに新しい」アイテムだと思います。
--布おむつは万能ではないからこそ、お子さん自身が快不快に敏感になれる。さらに自分の快不快の感情は、好き嫌いの意思表示にもつながっていくということですね。
やっぱりきちんと感じ取ることによって、選ぶ態度ができていくと思うんですね。好きなこと、気持ちいいことを選んでいく。
大人との共有関係が土台になり、「すごく気持ちよかった、僕は守られているから大丈夫。」という絶対的な安心感、信頼感がうまれていきます。それは、この言葉もなく、記憶にも残らないかもしれないこの時期に、本当に丁寧に育てていかないといけないんじゃないかと思うんです。三つ子の魂というのは、本当にその通りだと思います。3歳までの間にどういう体験を、大人との関わりをしてるかというのが、すごく重要だと考えています。
おむつなし育児とは、まったくおむつを使わないということではありません。赤ちゃんが、おしっこやうんちをしそうかな・・・というタイミングでおまるに乗せてあげて、なるべくおむつの外(おまるやトイレなど)で排泄させてあげる育児方法のことです。おむつなし、と聞くと少々怯んでしまうかも知れませんが、あかちゃんだって、おむつにうんちやおしっこをするのは気持ち悪いだろう、空中で排泄物に汚れずに出来たら気持ちがいいよね、という実はとってもシンプルな考え方からきています。(トイレトレーニングではありません)
--今は働く女性が増え、子どもとのスキンシップの時間が減る中で、布おむつを通じてコミュニケーションがとれるのは魅力的ですね。
おしっここんなに出たんだなとか、今日のウンチはずいぶんいいウンチだとかを観察していると、子どもとの距離を近く感じられますし、子どもの体調変化にも敏感になります。
あとは否応なく、旦那さんの協力だとか家族に協力を求めざるを得ない。使用した布おむつを洗うまでしなくても、干したり、取り込むことぐらいはできるでしょと、共同作業をどうしても求めざるを得ないし、そうしないとまわらない。その子育ての苦労を一緒にするっていう1つの経験を省略しないでやることで、家族の理解も深まり、協力的な関係が築いていけます。
--1人で負担を抱え込まずに、協力していく姿勢が重要なんですね。お母さんに任せるのではなく、旦那さんや家族とのコミュニケーションにもつながっていきますね。しかし、手軽に使い捨てできるものと比べると、洗濯の手間などマイナス面が気になってしまい、使う前に不便さのハードルを感じる方は多いですよね。
不便さが悪では全然ないです。例えば、この間、4、5歳児と一緒に蔵王に合宿に行ってきたんですよ。1泊してきたんですけど、親は残っててもらって、保育士4人とこどもたち20人ぐらいでバスに乗って。
大自然の中で中で、自分の足で歩かないと宿舎までたどり着けないその道を往復したり、自分でそりを持たないとそりすべりに行けない、そういう面倒なことだとか不便なことをいっぱい、子どもたちはたくさん体験するんだけども、本当に顔が変わるんです。心からの意欲だったり、コミュニケーションを求める気持ちが自然に出てくるんだなと。
--不便な環境を経験することで、気づくことや得るものがたくさんあるということですね。手間を惜しむのではなく、その不便さも楽しむ気持ちが大事なんですね。
布おむつは確かに手間はかかりますが、排泄の自立が早いというのは、実感として感じます。もちろん、排泄の自立を早めるために布にしているわけではありませんが、結果として、そういうご褒美がついてくるってことだと思っています。
1歳の誕生日を過ぎた子たちは、布おむつを卒業して、みんな綿パンツになっていますよ。そして、おまるに座って排泄をするようになっていきます。こうなるとずいぶんお母さんの負荷は軽減します。園内がオープンなスペースなので、大きい子たちが「お兄ちゃん、お姉ちゃんトイレ」でおしっこする姿を見てると、いつかはあそこに・・・という憧れを抱くんですね。まだよちよち歩きの小さい子でも、お兄ちゃんトイレに行ってやろうとするんです。
憧れが発達を引き上げる、私たちが、やいのやいのと何か言うわけではなくて、彼らが素敵だなと心が動かされることが、自分自身を発達させていくのだと思います。
--素敵と感じるものに影響を受け、どんどん成長していくんですね。子どもの持っているパワーはすごいと改めて感じます。
そうです。子どもの中にいろんな可能性や力があるものだと思うんですね。それが出てくるのは時間差がそれぞれあると思うんですが、その持っている力の面白さとか、偉大さとか、そういったものを私たちは驚きながら引き出していく。それは私たちの喜びであり、嬉しいと感じる瞬間です。だから憧れる気持ちがいーっぱい膨らむように、たくさんの素敵な大人や素敵な先輩たちがいて欲しいと思っているんです。